『いちゃLove❤チェス漫才!!』とは、様々なチェスの対戦棋譜を自作チェスエンジン「Sayuri」と一緒に漫才形式で解説する記事です。
チェスエンジンを擬人化したキモい記事ですが、生温か〜い目でご覧ください。
(モバイルユーザのために「オリンピアード 2018 SP」はチェスビューアじゃなく画像で紹介します!)
解説 & 漫才
僕
「ってなわけで「オリンピアード 2018 SP」の第2回だよ!
今回は超格上、ペルーのグランドマスターに勝利した松尾朋彦さんのゲームを紹介するよ!」
Sayuri
「オリンピアードが終わってずいぶん経ったどすが、ようやく第2回どすか。」
Stockfish先生
「自分のブログの更新ペースをすっかり忘れていたようじゃ。」
Sayuri
「まぁ「しばらくやる」って言った手前、あと 2回くらいは書かないと恥ずかしいどすな。」
僕
「くっ! そういうところをつつかないのが演者のマナーだろ。」
Sayuri
「で、今回はどんな試合どす?」
僕
「今回はオープンの第9ラウンド、「対ペルー戦」からグランドマスターの「
Jose Eduardo Martinez Alcantara」さんに勝利した松尾朋彦さんの試合を紹介する。」
Sayuri
「「グランドマスターに勝利」どすか。
そういえば昔、羽生善治さんが「グランドマスターに勝った!」ってことでチェス界の伝説になったどすが、松尾朋彦さんも羽生善治さん級の伝説を打ち立てたということどすな。」
僕
「そういうこと。
そんなすごい伝説的ゲームを紹介するよ。
ちなみに前回の記事、画像が多すぎてページがメチャクチャ重かったから、今回は画像をちょっち軽くするよ。」
Sayuri
「「ちょっち」どすか・・・死語・・・まぁ、いいどす・・・・・・。」
1.e4
1...e5
2.Nf3
2...Nc6
3.Bb5
3...a6
4.Ba4
4...Nf6
5.O-O
5...Be7
6.Re1
6...b5
7.Bb3
7...d6
8.c3
8...O-O
9.h3
Stockfish先生
「ずいぶん長いが、ここまでが Ruy Lopez, Closed のメインラインじゃな。」
僕
「オンラインチェスでもちょくちょく出くわす形。
白はマイナーピースがちょっと出撃しにくい形だけど、b3 のビショップが強力。
相手のキングを間接的に狙っているから黒は f ポーンを上げられない。」
Sayuri
「この大会は「90|30 (持ち時間 90分 | 1手 30秒加算)」どす。
棋譜を見ると白の持ち時間は「91分 11秒」で黒は「94分 1秒」と、両者持ち時間を増やしているどす。
二人共知っている定跡ということどすな。」
僕
「だね。」
9...Bb7
10.d4
10...Nd7
11.Nbd2
11...exd4
12.cxd4
12...Bf6
僕
「あー、そっか。」
Stockfish先生
「何がどうしたんじゃ?」
僕
「いや、大したことじゃないんだけど、黒が f6 のナイトを下げて e7 のビショップを f6 に置き換えた。
どうってことない手だけど、僕にそういう発想がなかったなぁ・・・って。
僕は「f ポーンを突くためにナイトを下げる」ことはあったけど、「ビショップと位置を入れ替えるために下げる」って考えたことなかった。
今度やってみよ。」
13.Nf1
13...Na5
14.Bc2
14...Re8
15.Bf4
15...g6
16.Rc1
16...c5
17.b3
僕
「「17.b3」って何だろう・・・・・・。」
Stockfish先生
「ワシの分析でもこれが最善手じゃ。」
僕
「例えば、そうじゃなくて「17.Bxd6」って取ったとする。 するとどうなる?」
Stockfish先生
「ワシの出番じゃな。 ワシの分析ではこうなるのじゃ。」
17.Bxd6 (バリエーション)
17...Nc4 (バリエーション)
18.dxc5 (バリエーション)
18...Bxb2 (バリエーション)
19.Rb1 (バリエーション)
19...Bc3 (バリエーション)
20.Re2 (バリエーション)
20...Rc8 (バリエーション)
僕
「うわぁ、白が追い回されて配置がグチャグチャになる感じだなぁ。
評価値はほぼ五分五分だけど、黒の c3 のビショップと c4 のナイトが白の自由を奪っている。
それもこれも全部黒ナイトが c4 に行けたからか。
ということは「13.b3」ってのは黒ナイトが c4 に行けないようにするためのもの・・・ってわけだな・・・たぶん。」
Sayuri
「棋譜を見るとこの手に 20分以上費やしているどすな。」
僕
「僕だったら 200年かかっても見つけられないや。」
17...Nc6
18.d5
18...Nce5
19.N1h2
19...Nxf3+
20.Qxf3
僕
「ん? 白クイーンで取るの? 白ナイトは?」
Stockfish先生
「次の手を見るのじゃ。」
20...Ne5
21.Qg3
僕
「あぁ、白クイーンを g3 に置いて、その後に白ナイトを f3 に動かして相手のキングにプレッシャーを与えようとしているのか。」
Stockfish先生
「ただしこの後、もし黒が「21...h5」としてきたらちょっと白が厄介なことになっていたのじゃ。」
21...h5 (バリエーション)
僕
「これで「22.Nf3」なんてことをすると?」
22.Nf3 (バリエーション)
22...h4 (バリエーション)
23.Qh2 (バリエーション)
23...Nxf3+ (バリエーション)
24.gxf3 (バリエーション)
僕
「これはちょっとヤダなぁ。
白の陣地が fファイルのダブルポーンで分断されている。
センターが白ポーンでガッチリしているから白キングが危険に晒されることはないけど、逆に言うとセンターの白ポーンを前進させられない。
ちゅーことは、b2 の白ビショップが必然的にバッドビショップになる。」
Stockfish先生
「そうじゃな。
でも実際は黒は「21...h5」としてこなかったのじゃ。」
21...Qa5
22.Bb1
22...c4
23.Red1
23...h5
24.Bxe4
24...Bxe4
25.f4
25...Qb6+
26.Kh1
26...Bg7
27.bxc4
27...bxc4
28.Rxc4
28...a5
29.Nf3
僕
「ううっ・・・解説し辛い・・・・・・。
えーと、何が辛いかと言うと・・・
- 両者持ち時間がなくなってきた。
- 特に白の持ち時間が残り 15分くらいになって余裕がなくなってきた。
- Stockfish先生がコンピュータならではの変態分析をし始めた。
・・・ってな感じかな。」
Stockfish先生
「ワシを変態扱いするとは失礼なやつじゃ!」
僕
「だってあんたに分析させたら、この一連の手順、白も黒もほとんど悪手じゃないか!」
Stockfish先生
「仕方ないじゃろ! コンピュータの処理速度は人間の比じゃないのじゃ!
時間に焦った人間の手は、ワシには全部悪手に見えるのじゃ!
文句があるならお主の自慢の「第6世代 Core i5」に言うのじゃ!」
Sayuri
「中古で 15,000円の CPU どすな。」
僕
「ね、値段を言うな!」
Stockfish先生
「そうじゃぞ。 値段は反則じゃぞ。
「お前の ASRock H170 Pro4 中古で 4,500円で売ってたぜぇ〜www ニンテンドー3DS のゲームソフトと同じ値段じゃねぇかwwwwww」なんて言ったら可哀想じゃ。」
僕
「マ、マシンは「値段」じゃねーんだよ! 「愛」だよ! 「愛」!
ゲームの解説続けるぞ!」
29...Qe3
30.Rc7
30...Qb6
31.Rc4
31...Qe3
32.Rc7
32...Qb6
33.Rcc1
Stockfish先生
「黒は「3回繰り返し」を狙ったのじゃ。」
僕
「うん。
きっとさっきの手順の時に黒は「あれ? オレっちちょっとマズくね?」とか気付いちゃったんだと思う。
ポーンの形は黒がかなり酷い。
d6 の黒ポーンがバックワードポーンで孤立ポーン。 しかも黒陣を分断してキングサイドに回せない。
一方、白は黒のキングサイドに集合しつつある。
その上、先生の変態分析によると「29...Qe3」は悪手だ。
次の「30.Rc7 Qb6」の後にヤバイ手順がある。」
31.Rxf7 (バリエーション)
31...Kxf7 (バリエーション)
32.Nh4 (バリエーション)
32..Qd8 (バリエーション)
33.Qxg6 (バリエーション)
33...Kg8 (バリエーション)
34.Qxh5 (バリエーション)
34...Qf6 (バリエーション)
35.e5 (バリエーション)
僕
「白はルークを失うけど黒キングの周りはスカスカで、白の駒が黒キングを狙いまくっている。
その上、パスポーンもできそうな雰囲気。
「3回繰り返し」の手順を見ると、黒はこの手順に気付いていなさそうだけど、それでも「ちょっとヤバイ」のは分かっていたんだと思う。
だから「3回繰り返し」を狙ったんだと思う。」
Sayuri
「それに白の方は時間切れが迫っていたどす。
だから、「3回繰り返し」のパフォーマンスを見せることで白に「オレ、何かしたら勝てるんじゃね?」と思わせて、考えさせて、時間をかけさせて、ミスを誘おうとしている・・・とも考えられるどす。」
僕
「よーするに、日本のプレイヤーが偉大なるグランドマスターを圧倒していたってことだ。」
33...Bh6
34.Nd4
34...Kh7
35.Rc3
35...Qd8
36.Nc6
36...Qf6
37.Rf3
37...Bxc6
38.dxc6
38...Ra7
39.f5
39...Qe5
僕
「パスポーンもできたところでちょっとブレイク。」
Sayuri
「何どすか?」
僕
「ここから白の怒涛のラッシュが始まる。
その嵐の前の静けさといったところだ。」
Sayuri
「いいところでもったいぶるのはオタクの一番鬱陶しいところどす。」
僕
「というより、ここを先生で分析しながら解説するのはちょっと違うなって思った。
白は持ち時間がほとんどないし、黒は白に持ち時間を使わせようと心理戦をやっている。
コンピュータで指し手を評価して悪手を指摘するのは「無粋」ってもんだ。
次の 40手目で持ち時間が 30分追加される。
そっから第2ラウンド開始ってことだ。」
Sayuri
「鬱陶しいオタクどすな。」
僕
「ここから最後まで一気にいくよ!」
40.fxg6+
40...fxg6
41.Rxd6
41...Rg7
42.Qxe5
42...Rxe5
43.Rc3
43...Ree7
44.g3
44...h4
45.e5
45...Rc7
46.Kg2
46...hxg3
47.Kxg3
47...Kg8
48.Bxg6
48.Rge7
49.e6
49...Bf8
50.Bf7+
50...Kg7
51.Rd8
51...Ra7
52.Kf4
僕
「長いけど、この一連の手順は白のパスポーンの戦い。
白はパスポーンを守り抜いて前進させれば「勝ち」。
黒は白のパスポーンを破壊すれば「引き分け」。
そんな感じ。」
Stockfish先生
「そして白は守り抜き、勝ったのじゃ。」
僕
「うん。
白の c3 のルークが gファイルに回ったら黒は確実に駒損。
その上白のパスポーンが 2つ。
黒はもう勝てない。」
Sayuri
「そしてグランドマスターを打ち倒した男の伝説がここに誕生したどすな。」
僕
「そう。 ホントにマジでその通り。
何が悔しかって言うと、羽生善治さんはグランドマスターを倒した時にあれだけマスコミや世間が騒いだのに、同じようにグランドマスターを倒した松尾朋彦さんはほとんど誰も見向きしない。
成し遂げた功績が全く一緒なのに、この待遇の違いがマジで悔しい。」
Sayuri
「結局世間が喜んだのは「日本の伝統ゲームの将棋の方が西洋のチェスより優れているぜ!」みたいな部分どす。
だから「将棋の棋士」がグランドマスターを倒すことに意味があるのであって、「チェスプレイヤー」が倒しても誰も興味を持たないどす。」
Stockfish先生
「功績といえば、最近は「オセロで 11歳の日本人小学生が世界チャンピオンになった」って話題で持ちきりじゃ。 (2018年 10月21日現在)」
僕
「それはメチャクチャ凄い。
そこで僕は考えた・・・日本のチェスのトッププレイヤー達がランドセルを背負って通学帽をかぶり、国際トーナメントに参加したらメチャクチャ話題になるんじゃないかって。」
Sayuri
「なるほど、それはいい考えどすな。」
Stockfish先生
「「天才小学生」が大好きな日本人が騒ぐこと間違いなしじゃな。」
僕
「しかもその格好でグランドマスターを倒したら、それこそ羽生善治さんを越える伝説になるに違いない!
ようやく日本のチェスプレイヤー達の功績も日の目を見ることになる!」
Sayuri
「あんさん、たまには素晴らしいことを言うどすな! 少し見直したどす!」
Stockfish先生
「ワシもお主の評価を改めねばならんようじゃ!」
僕
「もっといいこと考えた!
いっそ僕がおしゃぶりとオムツだけを身に着けてチェストーナメントに参加し、「天才乳児チェスプレイヤー」としてトーナメントデビューするってのはどうだっ!!」
Sayuri
「そんな事をしたら世界中の警察官をあんさんに差し向けるどす。」
Stockfish先生
「「赤ちゃんの格好で楽しむお店」には行ってみたいのう。」
一同
「ははははは!」
ナレーション
日本にグランドマスターを倒す人がいるのは近い将来日本人グランドマスターが誕生する兆しなんじゃないか・・・と思いつつも、今日も和やかに人工知能達の宴が終わるのであった・・・・・・次回、乞うご期待!!