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「チェスのルールでアフタースクール❤」
チェスの入門者のための、漫才風「チェスのルール解説」ラブコメディ!

人物紹介

百合園・九音 (ユリゾノ・クイン)

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  • 名前は「百合園九院 (ユリゾノ・クイン)」
  • 高校2年生。 帰宅部。
  • 超プライドが高くて友達ゼロ。
  • チェスが大好き。 かなり強い。
  • 夢は日本史上初のグランドマスター。
  • 勉強は平均よりちょい下。 運動神経、皆無。
  • ナイトとは小学校入学時からの家族ぐるみの付き合い。

柚木・菜偉人 (ユズキ・ナイト)

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  • 名前は「柚木菜偉人 (ユズキ・ナイト)」
  • 高校2年生。 サッカー部。
  • 超気さくで人気者。 女子からもモテモテ。
  • 成績は学年トップでサッカー部のキャプテン。
  • クインが大好きで、将来の夢はクインのお婿さん。
  • 元々病弱少年だったが、クインの強さに憧れて強くなっていった。
  • クインとは小学校入学時からの家族ぐるみの付き合い。

第8話 ポーンの特殊ルールでアフタースクール❤

ナレーション
今回は「ポーンの特殊ルール」について説明するみたいだよ。
どうやらクインのトーナメントデビューのお話が聞けるみたいだけど・・・・・・はてさて、どうなることやら。

ナイト
「そういやクーちゃんって「極太マツタケ大好き女子」だったよね。」

クイン
「ええっ!? いきなりセクハラ!?」

ナイト
「へっ? 「セクハラ」?
どういう意m・・・・・・あっ!」

ナイト
「ちちちち、違う! そういう形的なアレじゃなくて!
ほ、ほら、クーちゃん、中学生の時に「極太マツタケ」欲しさにハァハァ興奮してたから!」

クイン
「なななな、何言ってんの!
た、確かに「男子のマツタケ的なアレ」に興味ある年頃だけど、人前でそんな興味を公開するほどの根性はさすがにないよ!」

ナイト
「いいいい、今「そんな興味」を公開しちゃったみたいだけど大丈夫!?
てゆーか、そういうマツタケじゃなくて、「本物のマツタケ」のこと!」

クイン
「ほほほほ、「本場モノのマツタケ」って!
わ、私は「アメリカンサイズ」お断りだから! 「日本人サイズ専門」だから! 」

ナイト
「だだだだ、だから違うって!
僕が言っているのは、中学時代に近所の公民館で開かれた「今が旬! 極太マツタケ争奪チェス大会!」のこと!
クーちゃん、そこでトーナメントデビューしたよね、って話!」

クイン
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ナイト
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

クイン
「だ、だよね! し、知ってたし!
「男子のマツタケ的なアレ」は「男子が作るマツタケ料理」のことだし!
「アメリカンサイズ」って「マツタケ料理の量」ことだし!
「日本人サイズ専門」ってのは「マツタケ料理はやっぱり和食だよね」って意味だし!」

ナイト
「なーんだ、そういうことだったんだ。
さっきのクーちゃん、父親にベッドの下に隠していた「BL 漫画」を見つけられた時の女子高生みたいな態度だったから誤解しちゃったよ。」

クイン
「ははは、しょうがないなー、もー。
(帰ったら、押し入れのダンボールに移さなきゃ・・・・・・)」

ナイト
「で、クーちゃんはその大会で優勝したんだよね!」

クイン
「とーぜん!
中学生の私が、次から次へと襲いかかる強豪チェスマスター達をバッタバッタと倒し、決勝は「自治会のマグヌス・カールセン」こと「山村さん」を激闘の末打ち倒して、見事栄光の「極太マツタケ」をゲットしたんだよ!」

ナイト
「あれ? 「山村さん」って、チェスも指せる将棋のアマチュア棋士だよね?
もしかしてその大会の出場者って、クーちゃん以外はみんな「将棋の棋士」だったの?」

クイン
「それ以上言うんじゃねぇええええええええええええええええ!!
日本じゃ「チェスを専門にやっている人」より「将棋の棋士」の方がチェスが上手いという現実を突きつけるんじゃねぇ!
私の目を覚まさせ、現実を認めさせようとするあんたには絶対にチェスを教えない!」

ナイト
「く〜ん❤ 教えてよ〜〜〜❤」

クイン
「ぐはぁ! 教えます! 教えますとも!」

ナイト
「やった!」

クイン
「ってことで、今度は「ポーンの特殊ルール」を解説するよ。
先ず、自分のポーンが手前から「5段目」にあって・・・・・・」

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クイン
相手のポーンが「隣の列の初期位置」にあって・・・・・・」

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クイン
相手のポーンが「2歩」前進した時・・・・・・」

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クイン
「その直後の自分のターン」でのみ、相手のポーンのすぐ後ろにも同じポーンがあるとみなして・・・・・・」

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クイン
そのポーンを取ることができる。

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クイン
「これを「アンパッサン」っていうんだよ♪」

ナイト
「なんじゃそりゃああああああああああああああああ!」

クイン
「「アンパッサン (en passant)」ってのはフランス語で「通過の途中で」って意味。 「ところで」って意味もあるらしいよ。
英語の「by the way」とよく似た意味だね。 こちらも「ところで」の他に「道の途中で」みたいな意味もあるから。」

ナイト
「ねぇ、これって何のためのルールなの?」

クイン
「これはきっと、「2歩前進」を使って相手のポーンの脇を「射程外」から一気に駆け抜けようとするのを防いでるんだと思う。」

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ナイト
「駆け抜けられたらマズいの?」

クイン
「ポーンは相手のポーンの前進を止めるのも大切な役割。
せっかく自分のポーンを 5段目まで前進させて相手を窮屈に押さえ込んだのに、「2歩前進」ですり抜けられたら、せっかくの苦労が水の泡になっちゃう。
「戦略」をきちっと機能させるのもゲームのルールの大事な役割だからね。」

ナイト
「うーん、なんだか難しい・・・・・・。」

クイン
「まぁ、最初は違和感を感じるかもしれないけど、慣れれば自然なルールに感じるから心配いらないよ。」

クイン
「次の特殊ルール。
自分から 8段目、つまり相手側の一番端の段に到着したポーンは、「ナイト」「ビショップ」「ルーク」「クイーン」のいずれかに変身しなくてはならない。

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クイン
「これを「ポーンの昇格 (promotion)」って言うんだよ。」

ナイト
「これは分かるよ!
ポーンって前進しかできないから、端に行ったら動けなくなっちゃうもんね!
端まで頑張ったご褒美に強くなれるってことだね!」

クイン
「そういうこと!」

ナイト
「でも、4つも昇格できる駒があるなんて、迷っちゃうなぁ・・・・・・。」

クイン
「基本は「クイーン一択」だね。」

ナイト
「そうなの?」

クイン
「クイーンは「ビショップ」の動きも「ルーク」の動きも真似できる。
「ナイト」の動きは真似出来ないけど、ナイトよりクイーンの方が自由自在に動き回れるから、普通は「クイーン」に昇格する。
ポーンが昇格することを英語で「queening」とも呼んだりするくらいだからね。」

ナイト
「じゃあ、もうルールで昇格できる駒をクイーンだけにしちゃってもいいんじゃないの?」

クイン
「それはダメ。
というのも、クイーンに昇格するとマズいときがあるから。
例えばこういう時に・・・・・・」

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クイン
「クイーンに昇格しちゃうと、次の相手の手番でどうなるかな?」

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ナイト
「どうって、普通に・・・・・・」

ナイト
「ああっ! 動けない!
キングって確かルール上自分から取られに行っちゃいけないから、これ、指し手がないや!」

クイン
「そういうこと。」

ナイト
「いやいやいやいやいやいやいやいや! 笑い事じゃないって!
どうすんの! これ! 完全にバグってんじゃん! チェスってバグってんじゃん!」

クイン
「チェスがバグってるわけないだろぉ!
何百年も人々にプレイされ続けてきたゲームの王様だぞ!」

クイン
「詳しくはもっと後で説明するけど、これは「ステイルメイト」って言って、「引き分け」になる。
でもさっきのこの局面で・・・・・・」

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クイン
「「クイーン」じゃなく「ルーク」に昇格すれば白の勝ちだよ。」

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ナイト
「そうなの?」

クイン
「そう。 キングと二人きりで「チェックメイト」できるのは「クイーン」か「ルーク」のみ。
「クイーン」がダメなら「ルーク」に昇格するってこと・・・・・・って」

クイン
「「チェックメイト」についてまだ説明してなかった!」

ナイト
「あー、はいはい・・・・・・。
なんだか「オレ、もしかしてルール解説の構成、間違えたんじゃないか・・・?」って神様が反省している気がする。」

クイン
「他にクイーン以外に昇格するケースは、相手の「ルーク or クイーン」と相手の「キング」にナイトに昇格すれば両取りが仕掛けられる時。」

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クイン
「この場合は相手のクイーンを確実に取れるよね。」

ナイト
「なんでクイーンに昇格しないの?」

クイン
「簡単に言うと、相手の駒が少ないほど「チェックメイト」しやすいから。
相手にクイーンやルークが残っていると、駒の強さの差で勝っていてもチェックメイトが難しくなる。
特に持ち時間が少なくなると、時間切れ負けする可能性も出てくる。
だから、面倒くさい駒を減らす方を優先するんだよ・・・・・・って」

クイン
「「チェックメイト」についてまだ説明してなかった!」

ナイト
「あぁ・・・早く「チェックメイト」を教えてほしいなぁ・・・・・・。」

クイン
「まぁ、とにかく普通はクイーンに昇格するって感じだね。
先にクイーンに昇格した方がゲームの勝者と言ってもいいくらい。
そこで重要になるのが「パスポーン」ってやつだね。」

ナイト
「「パスポーン」?」

クイン
「「パスポーン」ってのは「相手のポーンに邪魔されることなく端っこまで前進できるポーン」のことだよ。
ちょっと数学的に言うと、「そのポーンの前方の段、かつ、そのポーンのいる列とその隣の列」に相手のポーンがいないポーンのこと。」

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ナイト
「うーん・・・他のポーンに邪魔されないってだけでそんなに得なの?」

クイン
「うん。
もし自分のポーンが他の駒でしっかりと守られていた場合、相手はポーン以外の駒でそのポーンを取りたくないよね。」

ナイト
「そうなの?」

クイン
「そこは分からなくても「なるほど」って言いなさい?
説明が面倒くさくなるでしょ?」

ナイト
「なるほど!」

クイン
「つまり、基本的にポーンの脅威は敵のポーンだけってこと。
その敵のポーンが自分のポーンの前進を阻めなかったら昇格しやすくなるってわけ。」

ナイト
「そっか。 終盤になったらそういうことに注意しないといけないってことだね。」

クイン
「ちょっと違う。 「パスポーン」はゲーム開始から注意しないといけないよ。
中級者以上のゲームを見ると分かるけど、「パスポーンをいかに作るか」「パスポーンをいかに作らせないか」って駆け引きはゲーム序盤からすでに始まっているんだ。
ゲームの勝敗ってのはたいてい「パスポーン」で決まるからね。」

ナイト
「難しい・・・・・・。」

クイン
「まぁ、慣れて余裕ができてから、そういうところに気を使うといいかもね。」

ナイト
「ポーンって面白いね! 解説ありがとう、クーちゃん!」

クイン
「やれやれ、これだから素人は・・・・・・。」

ナイト
「えっ!? もしかしてまだポーンの解説が残ってるの!?」

クイン
「あんた、この特殊ルールを学んで何も感じなかったの?」

ナイト
「な・・・なんのこと・・・・・・?」

クイン
「それは・・・・・・。」

ナイト
「それは・・・・・・?」

クイン
「ポーンは「女の子」なのか「男の子」なのか・・・ということ。」

ナイト
「(あぁ・・・この手の話題のクーちゃん、すごく面倒くさいんだよなぁ・・・・・・)」

クイン
「ポーンは昇格するといろんな駒に変身できる。
基本的にクイーンに昇格するってことを考えると、キングは女の子をポーンとして召集したと推測できる。
しかしそこで一つの疑問が湧く。
それは・・・ルークに昇格させざるを得ない時、女の子が短期間であんなにガチムチマッチョになるだろうか・・・・・・ってこと。」

ナイト
「(クーちゃんの中で「ルーク」はガチムチマッチョが当たり前なんだ・・・・・・。)」

クイン
「そこで私は真実に気がついた。
それは、キングは男の子のポーンを「女の子」のように幼少の頃から育てていたということ。
生物学的に言う・・・「男の娘」だね。」

ナイト
「(・・・・・・ノーベル賞ものだね。)」

クイン
「そしてキングはクイーンに内緒で、こっそりとポーン達を「将来の花嫁」として口説いていた。」

ナイト
「(やっぱり恋愛に絡めてくるんだね・・・・・・。)」

クイン
「そんなある日の夕方、夕日が差し込むキングの書斎。
机で書類を書いているキングと、ファイルを棚に並べていく小さなポーン。

ポーン「ねぇ、キングおじさん。 キングおじさんってクイーン様のことが好きなんでしょ?」
キング「ん? あぁ・・・まぁ、そうだな・・・・・・。」
ポーン「じゃあ・・・やっぱり僕、キングおじさんのお嫁さんになれないよね・・・・・・(シュン)」
キング「ちょっと、おいで。」

ポーンはファイルを置いてキングのすぐ横まで肩を落としながら歩いてくる。
キングはポーンをヒョイッと持ち上げ自分の膝の上に載せる。
ポーンはキングの膝の上に座り、キングと向かい合う。

キング「クイーンと私の結婚は私達の親が決めた結婚なんだよ。」
ポーン「そうなの? でもさっきクイーン様が好きって・・・・・・。」
キング「うん。 確かに好きだ。 良きパートナーだと思っている。 でも、戦争が始まって兵を集め・・・君と出会って気付いたんだ・・・・・・。」
ポーン「僕と?」
キング「もし私がクイーンよりも早くに君と出会っていたら、私は王の座を捨ててでも君と結婚しただろうって。」
ポーン「キングおじさん・・・・・・。」
キング「ポーン・・・・・・。」

静かに口づけを交わすキングとポーン。」

ナイト
「(うわぁ・・・痛々しい・・・・・・。)」

クイン
「感想は?」

ナイト
「さすがクーちゃん! ポーンのことがよく分かったよ!」

クイン
「でしょ!」

ナレーション
クインが獲得した極太マツタケ、おいしかったのかな?
次回は「チェックメイト」について説明するみたいだけど・・・・・・はてさて、どうなることやら。

(つづく : 第9話 チェックメイトでアフタースクール❤)

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