オープニングばあちゃん
「さて私、オープニングばあちゃんのオープニング講座でも始めようかねぇ。」
わんぱく君
「オレはチェスとヤンチャが大好きわんぱく君だぜ! よろしくだぜ!」
オープニング講座
オープニングばあちゃん
「さぁて、今回紹介するオープニングは「シシリアン・ディフェンス (オープン)」だよ。」
わんぱく君
「シチリア島はイタリア領の自治州だから「イタリアンゲーム」と呼ぶといいぜ!」
オープニングばあちゃん
「そうやって話をややこしくするような子は、「焼き肉」と「バーベキュー」の違いを考え続けてさせて脳を丸焼きにしてやろうかねぇ。」
わんぱく君
「や、やめてよぉ! おばあちゃん! (ガクガク・・・)」
オープニングばあちゃん
「さっそく解説を始めようかねぇ。
「シシリアン・ディフェンス」というのは次の形から始まる定跡なんだねぇ。」
わんぱく君
「えっ? 黒はセンターポーンを突かないの? だぜ?」
オープニングばあちゃん
「そうだねぇ。 「イタリアンゲーム」や「ルイ・ロペス」みたいに 1...e5 とすれば「五分五分」にはなるねぇ。
でもこの「シシリアン・ディフェンス」における黒の狙いは「優勢を築くこと」だから「五分五分」じゃ物足りないんだよ。」
わんぱく君
「ええっ!? 黒は優勢が築けるの!? だぜ!?
だったら「シシリアン・ディフェンス」があれば他のオープニングはいらないんじゃないのか!? だぜ!?」
オープニングばあちゃん
「そうじゃないんだよ。
シシリアン・ディフェンスは「優勢を狙える」かわりに「最初に白に主導権を渡す」というデメリットがあるんだよ。
黒はあくまで「反撃狙い」で最初は白が自由に好き放題やれてしまうんだねぇ。 だから黒はポーンを多めに動かして白の動きを抑制していかないといけないんだよ。
結果的に黒はキャスリングは後回しになっちゃうねぇ。」
わんぱく君
「ちょっと難しいオープニングなのか・・・だぜ・・・。
で、コロッと話は変わるけど、タイトルにある「(オープン)」ってのは何なんだぜ?」
オープニングばあちゃん
「「(オープン)」は「白がセンターポーンを交換するバリエーション」という意味なんだねぇ。
白がセンターポーンを交換しない「クローズド」もあるけど、今回は「オープン」の方を紹介するねぇ。
ちなみに「オープン」の方は「オープン・シシリアン」と呼ばれているよ。」
わんぱく君
「なるほど、「クローズド」の方は「クローズド・シシリアン」ってわけか。 だぜ。」
オープニングばあちゃん
「惜しいねぇ。 「シシリアン・クローズド」だねぇ。
(追記 : 「クローズド・シシリアン」ともいいます。 ごめんなさい。)」
わんぱく君
「だぜっ!」
オープニングばあちゃん
「ではその「オープン・シシリアン」の手順を紹介しようかねぇ。」
オープニングばあちゃん
「メインラインはこんな感じだねぇ。
トッププレイヤー同士ならわりとこんなかんじに進むけど、そうじゃなければいろいろ変化してくるねぇ。」
わんぱく君
「えーっ! だぜーっ!」
オープニングばあちゃん
「ちょっと「オープン・シシリアン」から外れるけど、例えばこんな感じかねぇ。」
オープニングばあちゃん
「これは「カナル・ソコルスキー・アタック」とかいうバリエーション。
他には・・・。」
オープニングばあちゃん
「こんな感じで黒の f7 を狙ってきたりもするねぇ。
どっちも白の方がピースの展開が一歩リードしていてキャスリングの準備までできている感じだねぇ。」
わんぱく君
「黒が後手後手に回っている感じだぜ・・・これじゃまるで最初から黒は「後手」と言っているようなものだぜ・・・。」
オープニングばあちゃん
「こんなところでチェスのルールを説明しちゃうような子は、スポーツやゲームでわざと初心者のフリして勝負して勝って「えっ? 僕の勝ち? ルール知らないけど勝っちゃった♪」とか言って煽って発狂させてやろうかねぇ。」
わんぱく君
「や、やめてよぉ! おばあちゃん! (ガクガク・・・)」
オープニングばあちゃん
「後は、黒が 2...d6 のかわりに 2...Nc6 とナイトを上げるパターンもあるねぇ。」
わんぱく君
「うぅ・・・いっぱいありすぎて頭が痛くなってきたぜ・・・。」
オープニングばあちゃん
「そうだねぇ、シシリアン・ディフェンスはそれを解説するだけで本が 10冊ほど書けちゃうからねぇ。
本 10冊分は辛いから、この記事では「シシリアン・ナイドルフ」と「シシリアン・ドラゴン」という 2つのバリエーションだけ紹介しようかねぇ。」
シシリアン・ナイドルフ・バリエーション
オープニングばあちゃん
「先ずは「シシリアン・ナイドルフ」からだよ。
初手からオープン・シシリアンの手順をもう一度載せるねぇ。」
オープニングばあちゃん
「そして次の手 5...a6 が「ナイドルフ・バリエーション」だよ。」
オープニングばあちゃん
「これは見たまんま、白のビショップを b5 へ行かせないための手なんだねぇ。」
わんぱく君
「なんか地味な手だぜ・・・。
Bb5+ なら簡単に防げそうな気がするけどそんなに危ないのか? だぜ?」
オープニングばあちゃん
「危ないというより、黒がやりたいのはポーンを e5 に進めることなんだよ。 そうすることで c8 のビショップが動きやすくなるからねぇ。
でも、この a6 をせずにすぐに e5 と進めると次のような困ったことが起こっちゃうんだよ。」
わんぱく君
「ん? これの何が困ったこと何だぜ?」
オープニングばあちゃん
「この場合は白と黒のビショップの状態の違いだねぇ。
白は動きやすい「グッド・ビショップ」で、黒はほとんど動けない「バッド・ビショップ」になっているよ。
しかも d6 の黒ポーンは前進できないから黒ビショップはしばらくの間使い物にならない邪魔者だねぇ。」
わんぱく君
「だったら、 6...Bd7 じゃなくて 6...Nbd7 とすればいいじゃないか! だぜ!」
オープニングばあちゃん
「それじゃあ、そうするとどうなるか見てみようかねぇ。」
オープニングばあちゃん
「とまぁ、長かったけどこんな感じかねぇ。」
わんぱく君
「ZZZzzz・・・ムニャムニャ・・・花子ちゃん、いじわるしてごめんね・・・本当は大好きだよ・・・ムニャムニャ(居眠り)」
オープニングばあちゃん
「小学生の不器用な初恋を夢に見るような子は、1990年代で流行ったドロッドロのイヤらしい大人のラブストーリーを見せて将来の自分に絶望させてやろうかねぇ。」
わんぱく君
「はっ! (目覚め)
や、やめてよぉ! おばあちゃん! (ガクガク・・・)」
オープニングばあちゃん
「とまぁ、こんな感じで白の各ピースがいい位置を陣取ることができるんだねぇ。
さらに黒のポーンの形も白に比べて悪いねぇ。 白のポーンアイランドは 2つに対して黒は 3つ、黒の h ポーンは孤立ポーンになっているからねぇ。
ポーンの形の悪さは終盤のポーンレースで負ける大きな要因になってしまうよ。」
わんぱく君
「分かったぜ! 黒ポーンを e5 に上げたかったらその前に a6 で「ナイドルフ」だぜ!」
シシリアン・ドラゴン・バリエーション
オープニングばあちゃん
「次は「ドラゴン・バリエーション」だよ。
先ずはオープン・シシリアンの手順をもう一度載せるよ。」
オープニングばあちゃん
「そしてこの次に黒が 5...g6 とするのが「ドラゴン・バリエーション」だよ。」
わんぱく君
「こ、これがあの「ドラゴン」か! だぜ!・・・・・・で、何が「ドラゴン」なの? だぜ?」
オープニングばあちゃん
「それは黒のキングサイド側のポーンの一群が星座の「りゅう座」に似ているからだよ。」
わんぱく君
「オ、オレ・・・なんだか小宇宙(コスモ)がムラムラ燃えてきたぜ!
だ、だめだ! で、出るっ! 出ちゃうっ! 廬山昇龍覇っ!!」
オープニングばあちゃん
「伝説のマンガ「聖闘士星矢」の「ドラゴン紫龍」を下ネタっぽく馬鹿にするような子は、左の拳が下がった瞬間に心臓をエクスカリバーで串刺しにしてやろうかねぇ。」
わんぱく君
「や、やめてよぉ! おばあちゃん! (ガクガク・・・)」
オープニングばあちゃん
「ドラゴン・バリエーションは黒がこの後 f8 のビショップを g7 に持ってきてフィアンケットしてキャスリングするのが目的だよ。
例えば「シシリアン・ドラゴン・ユーゴスラブ・アタック」というバリエーションならこんな感じかねぇ。」
オープニングばあちゃん
「そしてたいてい白は黒の g7 のビショップを破壊するためクイーンを d2 に持ってきて白ビショップと白クイーンのバッテリーを組む感じになるよ。
この場合は白はクイーンサイドにキャスリングする形になるねぇ。」
わんぱく君
「うーん、白の駒はずいぶん前線に出ているのに黒の駒は初期位置にへばりついている感じがするぜ・・・。」
オープニングばあちゃん
「じゃあ、ちょっと図を上下逆さにしてみようかねぇ。」
オープニングばあちゃん
「これを見ると、白はセンター付近では強いけど、白がクイーンサイドにキャスリングした後に黒は白キングをポーンで攻めやすい形にはなっているよねぇ。
白と黒がお互い逆サイドにキャスリングした状態だと「どちらが先に敵のキングを叩くか」の競争ゲームになるから黒は結構いい形なんだよ。」
わんぱく君
「かなり緊張感のある戦いになりそうで面白そうだぜ。
オレは「ドラゴン・バリエーション」を使いこなして「ドラゴン使い」になってやるぜ!」
オープニングばあちゃん
「もしかして坊やの本名は「ワタル」かねぇ。」
まとめ
オープニングばあちゃん
「「シシリアン・ディフェンス」は黒から仕掛ける定跡なんだけど、少し難しい定跡だからチェスのルールを覚えたての人は避けたほうがいいかもしれないねぇ。
「1.e4 e5」 系の定跡に飽きたときに挑戦するくらいが一番いいタイミングかもしれないよ。
でも自分が白で相手がシシリアンを仕掛けてきたときのことを考えて、大まかな手順は知っておいていいかもねぇ。」
ばあちゃん・わんぱく君
「それでは次回も見に来てくださいねぇ。」「だぜ!」